イスパニア語ブログ

FILOLOGÍA ESPAÑOLA

「色」っぽい

今回のテーマは「『色』っぽい」。
セクシーという意味ではなくて。。。

 

【きっかけ】

今回のタイトルはある色味を帯びるという意味で、日本語だと「黄色っぽい」「青みを帯びた」「赤みがかった」などといったところを意味したつもりでした。

みなさんはスペイン語で「赤っぽい」や「青っぽい」と言うとき、どのように表現しますか?
もちろん、"Se ve como rojo / azul." で問題ないし、ネイティヴに質問したらおそらくこのように答えられることもあるかと思います。(実際に昔ぼくがスペイン人に質問したらところ、このように言われました。)

ただ、そんな味気ないスペイン語よりも一ランク上(?)の表現がしたくて、がむしゃらに語彙を蓄えていた時期に、negruzco,a という単語を知りました。想像がつくと思いますが、negro,a から来ているこの単語は「黒色っぽい」を意味します。
その後、別の機会に verduzco,a という単語を見つけて、

「あ〜、色を表す形容詞に接尾辞 -uzco,a を付けたら「その『色』っぽい」っていう意味になるのか!」

と思い、ならば「赤っぽい」は rojuzco,a、「青っぽい」は azuluzco,a なのかなと考えました。しかし、残念ながらその後に辞書で調べて絶望したのも覚えています。。。:'(

日本語では色の名前に「っぽい」を付ければ完了ですが、スペイン語では残念ながら(?)、各色に「〜色っぽい」という単語が存在しているので覚えないとダメなのです。。。
今回は、そんなスペイン語の「『色』っぽい」について見ていきましょう。

 

【考察】

「赤」 rojo,a - rojizo,a

「赤 (rojo, roja)」を「赤っぽい (rojizo, rojiza)」にする接尾辞は -izo/-iza です。
Nueva gramática に次の記述がありました ↓

接尾辞 -izo/-iza と接尾辞 -dizo/-diza は「傾向」という意味を持つ
-dizo/-diza を接尾辞に持つ単語は動詞から来ていることが多い(escurridizo, movedizo
一方で、-izo/-iza を接尾辞に持つ単語は形容詞もしくは名詞から来ている(enfermizo, rojizo; calizo, cobrizo
'semejante a 名詞' の意味を表し、cobrizo'parecido al cobre en el color(銅の色に似た)' を意味する(§7.5e)

赤色の傾向を持つ(けど赤色ではない)色ということで、rojo + -izorojizo
cobrizo も「銅」を意味する名詞 cobre に -izo が付いて「銅のような色 = 銅色」を表すということですね。


「青」 azul - azulado,a

「青 (azul)」を「青っぽい (azulado, azulada)」にする接尾辞は -ado/-ada
こちらは小学館西和中辞典[第2版]に次のように載っていました ↓

2 名詞に付いて「…を持った、…の集まった、…に似た、…がかった」などの意を表す形容詞語尾 → arbolado, azafranado, barbado, perlado(-ado, da)

"árbol + -ado" の arbolado,a は「樹木の茂った」、"barba + -ado" の barbado,a は「あごひげを生やした」という意味を表し、接尾辞 -ado はそれぞれ「(木々の)の集まった」、「(あごひげ)を持った」というニュアンスを表していますね。
"azafrán + -ado" の azafranado,a は「サフランで香味[風味]を付けた; サフラン色の、濃黄色の」を意味し、「(サフランの風味)を持った」または「(サフランの色)に似た」というニュアンスを、"perla + -ado" の perlado,a は「真珠色の」で「(真珠の色)を持った、(真珠の色)に似た」というニュアンスを -ado が示していると言えます。

例にあるように名詞に付いて「〇色」を表すようです。
「青っぽい」を意味する azulado,a もこれに当てはまるのでしょうか?つまり、azul を名詞扱いして -ado を付けて「青に似た、青みがかった」という意味を持つに至るのでしょうか?

辞書を引いてみると azular(青くする、青く染める)という動詞がありました。もしかしたら azulado,a はこの動詞の過去分詞形で「青くなった」というところから「青っぽい」という意味になったのかも、とふと思いました。


「黄」 amarillo,a - amarillento,a

「黄 (amarillo)」を「黄色っぽい (amarillento, amarillenta)」にする接尾辞は -ento/-enta
こちらも小学館西和中辞典から引用します ↓

2 「…に似た」の意味を表す形容詞語尾。-ento となることもある → amarillento, ceniciento(-iento)

「黄色 (amarillo)」に「似た (-iento)」ということで「黄色っぽい (amarillento)」を表すのと同様に、「灰 (ceniza)」に「似た (-iento)」色ということで「灰色 (ceniciento)」となるんですね。


「緑」 verde - verduzco,a / verdoso,a
実は「青っぽい」という単語には azulino,aazuloso,a などの別の形も辞書には載っていますが個人的には実際に使われているのは見たことも聞いたこともなく、ネイティヴに聞いてみても「聞いたことない」もしくは「聞いたことあるけど使うことはない」といった感じでした。
しかし、この「緑っぽい」という単語ですが、ぼくは verduzco,averdoso,a の二種類が使われているのを見たことあります。ですので、「緑っぽい」に関してはこれら二つの形を見てみます。

まずは、verduzco,a の -uzco/-uzca から。
小学館西和中辞典には次のようにあります ↓

「…に似た、…の性質を持った」の意を表す形容詞語尾▶しばしば軽蔑のニュアンスを伴う → balnduzco, parduzco(-uzco, ca / -usco, ca)

verde + -uzco で「緑色に似た」という verduzco になり、褐色・茶色を表す pardo に -uzco が付くことで「褐色がかった」という意味になります。
引用内の「しばしば軽蔑のニュアンスを伴う」という部分ですが、Diccionario de la lengua española を引いてみると次のように書かれていました ↓

1. suf. En adjetivos indica relación o pertenencia y a veces tiene matiz despectivo. Adopta también las formas -asco, -esco, -isco, -izco, -usco, -uzco. Bergamasco, burlesco, morisco, blanquizco, pardusco, negruzco.(-sco, ca)

"a veces tiene matiz despectivo" の部分が上の「軽蔑のニュアンス」に当たりますね。これが具体的に何を表しているんでしょうか。。。

一方で、verdoso,a の -oso/-osa に関しては

2 「…に似た、…の性質を持った」の意を表す形容詞語尾 → esponjoso, apestoso(-oso, sa)

上の -uzco/-uzca と同じ意味を与えるようです。

さて、verduzcoverdoso の二つに何かしらの違いはあるのでしょうか?
メキシコ人の友だちに聞いてみると、そもそも verduzco の方は「聞いたことない」、「小説とかで使われるイメージ」だそうで、あまりメキシコでは使われていないようです。

一応、DRAE でこれら二つを引いてみると 

1. adj. Dicho de un color: Que tira a verde oscuro.(verduzco, ca)

1. adj. Dicho de un color: Que tira a verde.(verdoso, sa)

verduzco の方には "verde oscuro" とあります。
もしかすると、上で見た接尾辞 -uzco/-uzca の持つ「軽蔑のニュアンス」というのは、ここでは「暗い、濃い (oscuro)」という意味から派生して「くすんだ」というニュアンスを持っているのかなと考えます。


「白」 blanco,a - blanquecino,a
             blancuzco,a

「白っぽさ」にも blanquecino,ablancuzco,a という二通りの形があります。ぼくがスペインで習ったのは前者ですが、メキシコ人の友だちの中には「聞いたことない」という人もいました。

この二つの違いを DRAE の定義から読み解くと、、、

1. adj. Dicho de un color: Que tira a blanco.(blanquecino, na)

1. adj. Dicho de un color: Que tira a blanco o a blanco sucio.(blancuzco, ca)

verde で見た通り、-uzco/-uzca には「軽蔑のニュアンス」があるとのことでしたが、この blancuzco, ca の定義に "blanco sucio" とあり、これこそまさに「軽蔑のニュアンス」を表している証拠になりますよね。
つまり、verduzcoblancuzco も両方、ニュートラルな verdoso, blanquecino と比べて「汚れた、くすんだ」というニュアンスが含まれていると考えられます。


「黒」 negro,a - negruzco,a
「黒っぽい」を表す単語は上で出てきた -uzco/-uzca が付いて negruzco,a です。
ネイティヴに聞いても「黒っぽさ」にはこの他の単語はないようです。この negruzco,a の場合は接尾辞 -uzco/-uzca は「軽蔑のニュアンス」はあるんでしょうか?
黒色が「汚れた」り、「くすんだ」りしたところで黒は黒だから、不問ということでいいんじゃないでしょうか。


「灰色」 gris - grisáceo,a

 「灰色 (gris)」を「灰色っぽい (grisáceo, grisácea)」にする接尾辞は -áceo/-ácea
こちらは改めて Nueva gramática で記述を見つけたので引用します。

形容詞語尾の -áceo/-ácea は名詞から類似した形容詞を形成する
abietáceo(モミ属の)や gallináceo(キジ目の)のように生物学用語に特徴的な接尾辞だが、grisáceo(灰色がかった)や rosáceo(バラ色・ピンクがかった)のように一般的な言葉として類似を表す形容詞を形成することもある(§7.12j)

"gris - grisáceo" や引用内の "rosa - rosáceo"、他にも「スミレ色」の "violeta - violáceo" や「黄土色」の "ocre - ocráceo" などもありました。


最後に、「『色』っぽい」という他の言い方についてです。
DRAE の定義にも出てきていますが、"Que tira a verde" や "Que tira a blanco" のように動詞 tirar a で「〇色に似た」というのを表せます。
なので、「若干黄ばんだ白 (blanco amarillento)」と言いたい時に amarillento という単語を知らなくても、"blanco tirando a amarillo" のように言い表すことが可能なのです!

 

【今回の結論】

 日本語     色      色「っぽい」
 赤  rojo,a  rojizo,a
 青  azul  azulado,a
 黄  amarillo,a  amarillento,a
 緑  verde  verdoso,a / verduzco,a
 白  blanco,a  blanquecino,a / blanduzco,a 
 黒  negro,a  negruzco,a
  灰色  gris  grisáceo,a



今回、「『色』っぽい」というテーマで複数の色での言い方を調べました。しかし、冒頭でも書きましたが、ネイティヴrojizoazul verdoso という代わりに "como rojo" や "azul tirando a verde" のような言い方をしますし、上の表に載せた色以外の「『色』っぽい」という単語は実際には使われていないものがほとんどです。

ですが、知っておくことに越したことはありません!なので、「いざ出会った時に対応できるように知識程度に頭に入れておく」といういつものスタンスでいきましょう :)