イスパニア語ブログ

FILOLOGÍA ESPAÑOLA

El castillo de Cagliostro

先日、メキシコで使っている銀行口座を確認してたら、見知らぬ330ペソ(約2000円)の引き落としがなんと3回もありました。その支払いの名目は、、、

NETFLIX

ちょい待ち。メキシコで契約した覚えはないし、契約してる日本のNETFLIXには日本の口座から毎月ちゃんと払ってるよ。二重で払ってもうてるやん。知らん間にめちゃくちゃ太客になっとるやんけ、メキシコに来てからNETFLIX開いてすらないのに!どないなっとんねん!

と思いながら銀行へ。こういう場合何が怖いって、一体どこからぼくの口座番号やらセキュリティコードやらの情報が盗まれたかが全く分からないということ。。。
銀行で話を聞くと、お店とかでカードで支払う時の機械に細工されてて、情報を取られちゃうことが多々あるって。あとは、「ATMも細工されてることあるから気を付けな」だって。

ATMはあなたたちの管轄でしょ(笑)
ちなみに、ATMだったらカードを差し込む前にキャンセルボタンを2回押せば全プロセスがリセットされるから、もしATMが細工されてたとしても多くの場合で助かるらしいですよ。

これがメヒコか。。。

 

【きっかけ】

上の出来事を経て、ふと自分が開きもしないNETFLIXに毎月1300円を払っていたことを思い出しました。せっかくお金を払っているので活用しようかなと久しぶりに開くと、そこにはルパン三世の「カリオストロの城」が。

つい先日新作映画が公開されたのでそのPRでしょうか?
メキシコにいる以上そちらはいつ見れるかはわかりませんが、今回は何十回と観てきた歴代ルパン映画の最高峰をスペイン語で見てみようと思います。
あの有名なセリフがスペイン語ではどうなっているのかというのも含めて、日本語に対応するスペイン語の吹替と字幕を比較して見ていきたいと思います。

 

【考察】

メキシコにいるからでしょうか?スペイン語の吹替と字幕ともに「スペイン語中南米)」となっていたので、中南米バージョンのルパン3世となります。


日本語 : ごくろうさん
吹替 : Esfuérzate.
字幕 : ¡Sigan con el buen trabajo!

この映画の冒頭のシーン。ルパンと次元がカジノから大風呂敷でお金を盗んで車で逃走。大勢の男たちが2人を追いかけようと車に乗るものの、周到に全車壊されており、開いたボンネットの裏に紙で「ごくろうさん」の文字が。(ちなみに、直前の引きの絵では「ごくろうさま」になってます!!)

「おつかれさま」と並び外国語に訳しにくい"日本語らしい日本語"ですが、よく聞くのは "Buen trabajo" もしくは "Bien hecho" とかでしょうか?字義どおりに解釈するなら「よくやったね」と相手を褒める言葉ですが、訳されたスペイン語を見てみると吹替・字幕ともに「もっと頑張れ」といったニュアンスに訳されてます。
しっかりルパンのキャラに合った訳じゃないでしょうか!


日本語 : 前祝いにパーとやっか!パーァ!
吹替 : ¡Felicitaciones, amigo mío!
字幕 : ¿Y si nos vamos de fiesta a celebrar por adelantado? ¡Fiesta!

盗んだ札束が全て偽札だということにルパンが気付き、次の仕事はこの幻の偽札「ゴート札」の出所を突き止めることに決まり、走っている車から大量のお金を投げ捨てる時のセリフ。

訳すのが難しそうなセリフですね。
吹替は皮肉を込めて "Felicitaciones"(笑)そして、"amigo mío" って言っているのがなんともスペイン語版っぽいですね。
一方、字幕は日本語に限りなく近いですね。むしろ、ほぼ直訳。ちなみに、吹替では表されていないものの、お札を投げ捨てる瞬間の「パーァ!」という部分は "¡Fiesta!" となっています。なるほどです :)


日本語 : 警察官は太鼓持ちじゃありません
吹替 : Nosotros no somos payasos.
字幕 : Los oficiales no son lacayos.

とっつぁんがカリオストロ城内で捜査をしていると、政治的影響力を持つカリオストロ伯爵が直々にインターポールに連絡をしており、日本警察の帰還を言い渡されてしまいます。不服に思ったとっつぁんはパリ本部に直接抗議の電話をし、上のセリフを言います。

吹替の方の "payaso" は「お調子者、おどけ者、いい加減な人」などの意味で、確認しましたが「太鼓持ち」のような意味を表すことはないようです。ここではどういった意味を込めて翻訳されたんでしょうかね?気になります。
字幕では "lacayo" という単語が使われています。聞いたことないので調べてみると、「下男」に加えて「おべっか使い、腰巾着」という意味があるそうです。

ぼくがもし訳すなら "Nosotros no somos pelotas." とかですかね。
ちなみに、メキシコ人の友だちに聞いたら、メキシコでは pelota はこういう意味では使われないそうです。スペインの言い方っぽいです!

日本語 : 今俺がここに来なかった?バカヤロー、そいつがルパンだ!俺に化けてもぐりこんだんだ。でっかい図体して変装も見破れんのか。ごくつぶし!

吹替 : Ese era Lupin disfrazado. ¿No sabe distinguir a un policía de un ladron? ¡Atrapa a Lupin! ¿Acaso no me entiende lo que le estoy diciendo?

字幕 : ¿Estuve aquí hace un momento? ¡Pobre idiota! ¡Ese era Lupin! Se disfrazó de mí y entró. ¿Tanto que hablan y no saben distinguir un disfraz? Bueno para nada.

説明不要の伝説的シーン。

「ごくつぶし」てなんや、って毎回思いますが、、、

飯は一人前に食うが、何の働きも収入もないこと。また、その人。多く、人をののしっていう。役立たず。無駄飯食い。(穀潰 (コトバンク))

なるほど。勉強になりました。これから使って行こうっと ;)

さて、吹替では「バカヤロー」もはたまたメインの「ごくつぶし」も訳出されてません!なんともマイルドに落ち着いたスペイン語に成り下がっています。
そんな中、字幕では「バカヤロー」は "¡Pobre idiota!"、「ごくつぶし」は "Bueno para nada."。後者は初めて聞きましたが最高ですね。調べてみると「役立たず、甲斐性なし、ろくでなし」などを意味するようです。
なるほど。勉強になりました。これから使って行こうっと ;)

ここまで吹替と比べると直訳気味でおもしろみに欠けてきた字幕ですが、今回はオリジナルにより近いこちらの方がぼくは好きです。こういった名台詞は意味よりもオリジナルへの忠実さを重視した方がいいんでしょうか?これがファン心理ってやつですかね。


日本語 : どうかこの泥棒めに盗まれてやってください - わたくしを?
吹替 : Permite que este ladrón te robe, princesa. - ¿A mí?
字幕 : Por favor, permite que este ladrón te robe. - ¿Yo?

高い塔に閉じ込められているクラリスを解放するために塔に忍び込んだルパン。このセリフもこの作品を代表するセリフの一つですね。

吹替・字幕ともに小さな差異はあるものの、ほとんど同じです。ここで注目すべきはその後のクラリスのセリフ。吹替は "¿A mí?" で、字幕は "¿Yo?"。なんとも興味深い差が生じています!

とっさの返事なら "¿Yo?" が出てしまいそうですが、冷静に考えると "¿(Me robas) A mí?" ですよね?字幕を付けた方はどういう意図があったんでしょうか?もしかしたら、めちゃくちゃ深い意味を込めてるとか。。。?
ネイティヴに聞いてみると、やっぱりこの文脈で "¿Yo?" はオカシイそうです。


日本語 : 泥棒さん
吹替 : Señor ladrón
字幕 : Señor ladrón

クラリスがルパンを呼ぶときの言い方。

そのままなんですね。
ちなみに、クラリスは日本語では育ちの良さが分かる非常に丁寧なしゃべり方をしており、ルパンに対して敬語を使っていますが、スペイン語では "Señor" と呼んでいるルパンに対してもずっと で話しています。


日本語 : 盛大なお出迎え痛み入るぜ、伯爵
吹替 : Gracias por el caluroso recibimiento, señor conde.
字幕 : Estoy muy conmovido con esta bienvenida, conde.

塔に忍び込んだルパンに気付き、大量の殺し屋とともにやって来た伯爵に対してのルパンのセリフ。

注目は最後の「伯爵」に当たる訳。吹替では "señor" が付いて "señor conde" となっています。これを逆に日本語に訳すなら「伯爵さんよぉ(ルパン風)」とかでしょうか?ルパンの声ありきの訳の提案です。


日本語 : くそー、人を排泄物扱いしやがって!フーン!
吹替 : Uaaa! ¡Me tratan como si fuera una basura!
字幕 : ¡Rayos! Me trata como si fuera excremento. ¡Como si fuera popó!

上のシーンで床下に落とされたルパン。偽の指輪で伯爵に一泡吹かせたルパンでしたが、怒った伯爵がルパンを落とした穴に大量の水を流し地下まで流し落とした時のセリフ。

吹替では「フーン!」が略されてます。二つ目に見た「パーァ!」もそうでしたが、こういった感嘆詞的なものはやはり外国語にするのが難しいんでしょうね。
そして、字幕では模範解答かと思うほどの直訳!しかし、「フーン!」の部分が文脈に沿ってきれいに訳されています。天晴!


日本語 : またつまらぬものを斬ってしまった
吹替 : Hay que continuar eliminando la basura.
字幕 : Otro objeto insignificante cae víctima de mi espada.

お待たせしました。我らが五ェ門の名台詞。

吹替は「ごみを排除し続けなければならない」。字幕は「またつまらないものが拙者の刀の犠牲となる」。
そのまま日本語に訳し直しただけですが、五ェ門の侍言葉の堅さに字幕の堅さがマッチしていると思います。


日本語 : 今宵の斬鉄剣は一味違うぞ
吹替 : Esta noche mi espada está sedienta, caballeros.
字幕 : Mi acero está especialmente fino esta noche.

クラリスの可憐さに見惚れた後の五ェ門のセリフ。

「一味違う」という日本語。一見訳すのがそこまで難しそうではないですが、これを端的に訳しすぎると味気なくなってしまう危険性も見える気が。。。五ェ門というキャラを踏まえる必要がありそうですね。
吹替の "sedienta" ですが、この単語を知らなかったので聞き取れず。。。やむなくネイティヴの友だちに聞いてもらって教えてもらいました。sed から来るこの単語は「のどが渇いた、切望した」を意味し、ここでは文脈から「斬鉄剣が『血』を求めているってことだと思う」とのこと。なるほど、腑に落ちました。良訳ですね。
一方の字幕では斬鉄剣を "acero" としていますね。比喩的な表現かなと思いましたが、一応辞書を引いてみるとこの単語自体に「刀剣」という意味があるようです。<文語>と表記があるので、この点でも"五ェ門らしさ"を表しているんじゃないでしょうか?

どちらもぼくでは思い付くに至らないナイスな訳だと思います。


日本語
銭形 : くそぉ、一足遅かったか。ルパンめ、まんまと盗みおって。
クラリス : いいえ、あの方は何も取らなかったわ。私のために戦ってくださったんです。
銭形 : いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。
クラリス : はい!

吹替
銭形 : De nuevo se me escapó. Ese ladrón de lupin no tiene cura.
クラリス : Ese hombre no me robó nada. Al contrario luchó para salvarme la vida.
銭形 : Usted debería saber que robó algo muy valioso. Su corazón.
クラリス : Es cierto.

字幕
銭形 : ¡Rayos! ¡Un paso detrás! ¡Ese Lupin escapó con su botín!
クラリス : No, no se llevó nada. Me concedió el honor de luchar en mi beneficio.
銭形 : No, señorita, Se fue con un gran premio. Su corazón.
クラリス : Sí.

カリオストロの城と言えば、このラストシーン。

みなさんは吹替と字幕、どちらのスペイン語がお好みですか?
ちなみに、"botín" は「戦利品、盗品」という意味でした。


日本語 : わっわっ、お友達になりたいわ
吹替 : Ven, sigamos amigos.
字幕 : ¡Guau! Me encantaría ser tu amigo.

カリオストロ城から偽札の原板を持ち出していた不二子に対するルパンのセリフ。

吹替と字幕でニュアンスが違いますね。やはり、訳者によって解釈や訳し方が全然違っていますね。

 

【まとめ】

登場人物の呼び名ですが、
五ェ門は字幕ではそのまま Goemon ですが、吹替ではそれに加えて Samurai 。
とっつぁんは字幕では Zenigata に加えて、ルパンから Papá と呼ばれていることもありました。まさに「とっつぁん」!一方で吹替においては Señor Cot(「セニョール・コッt」のようにぼくには聞こえました。英語で警官を表す cop かなと思ったんですが、何回聞いても「コッt」と聞こえるので先のように書きました。)
不二子はルパンととっつぁんは「フジコ」とそのまま読んでいるものの、次元だけは「フヒコ」と Fujikoスペイン語読みしていました!なんで吹替声優の間で呼び方を統一しなかったんでしょうか?(笑)

最後に、先月末にお亡くなりになった二代目・石川五ェ門役の井上真樹夫さんはこのカリオストロの城でも五ェ門の声優を務められました。ご冥福をお祈りします。