イスパニア語ブログ

FILOLOGÍA ESPAÑOLA

"オレの"落ち穂ひろい ①

Carpe diem

色んなところで目にするこのラテン語
スペイン語では "Aprovecha el día (de hoy)" と翻訳・説明され、「今日という日を大切にしなさい」や「この瞬間を楽しみなさい」という格言ですね。

 

【きっかけ】 

大学時代、友人がおもしろそうな本を持ってました。それがこちら ↓

新・スペイン語落ち穂ひろい: 777の表現集

新・スペイン語落ち穂ひろい: 777の表現集

 

清水憲男先生の『新・スペイン語落ち穂ひろい: 777の表現集』という本です。
長い年月をかけてゆっくりのんびりとスペイン語のおもしろい表現や言い回しをひろい集めてきた、スペイン語学習者には垂涎の名著です!

と言いながらも、パラパラといくつかのページを彷徨っただけですが。。。
いつか日本に帰った時に買おうっと! :)

ただ、この本の中でひとつだけ今でも覚えている表現があります。それが、

Un día es un día

「今日くらいいいじゃない!」みたいな多分に楽観さが含まれたポジティヴな意味で、上のラテン語を知ってすぐのタイミングで似たような意味のスペイン語の表現を知ったので、すごく覚えています。


さて、そんなスペイン語界の名著と比べてしまえば皮相浅薄極まりないですが、ぼくにもスペイン留学中の一年間毎日、一日も欠かさずスペイン語の「落ち穂」をひろい集めた経験があります。
予定帳として買ったものの完全にスペイン語単語帳と変貌した下の手帳『"オレの"落ち穂ひろい』から10個の表現を共有します ↓

f:id:sawata3:20191023131633j:plain

表紙かわいい。

馴染みのある動詞に隠されていた(ぼくが知らなかっただけですが。。。)意味や用法を発見した時の衝撃たるや!
今回はそんな日常的な動詞が表す「実は!」な表現10選をどうぞ。

 

【落ち穂】

Quédatelo. (el 5 de octubre)

スペインに着いてまだ一ヶ月も経たない頃、初めてできたスペイン人の友だちに地図を使って街を案内してもらった後、「この地図あげるよ!」と言って地図をくれました。
つまり、Quédateloloel mapa のことです。
学校の授業で Me quedo con esta camiseta.「このTシャツを買います」や Quédese con el cambio.「お釣りは取っといてください」(←言ったことない!)のように quedarse con algo でその人のものにするという意味と習っていましたが、前置詞 con がなくてもOKということを学びました。
ちなみに、辞書によっては≪口語≫と記載されてます。


¡Ahora caigo! (el 21 de octubre)

スペインのテレビのクイズ番組のタイトルでもあるこの表現。
そのクイズ番組では制限時間内に答えられなかったら回答者の足元の床が開いて下に落ちるということでそのままの通りに caer という動詞が用いられているんですが、実はこの動詞には「理解する、分かる」という意味もあるんです。つまり、落とされた回答者が答えを聞いて「ああ!今(答えが)分かった!」という二重の意味を含んでいるナイスな番組タイトルなのです。
この二つ目の意味を教えてもらったとき、まさに ¡Ahora caigo! と叫んでしまいました(笑)
清水憲男先生と同じくスペイン語界の巨匠・福嶌教隆先生の貴書内で、「日本語でも理解することを『腑に落ちる』というようにスペイン語でも同じ「落ちる」を表す動詞が同じように用いられます」という内容を後に読みました。言われてみればそうですよね!おもしろい!

ちなみに、メキシコ人の友だちの前でこの表現を使ったら、笑いながら「めっちゃスペインのスペイン語やね」と言われました。メキシコではあまりこの用法では使われないとのことです。


¡Me apunto! (el 23 de diciembre)

apuntar は他動詞であれば anotartomar notas の同義として「メモを取る」や「記入する」であり、自動詞であれば「狙いを定める」といった意味ですね。
ただ、再帰動詞で用いると「自分自身(の名前)を記入する、登録する」という意味から「参加する、話に乗る」という意味を表します。

みなさんもスペイン語話者の友だちに「今夜みんなで飲みに行くけどどう?」や「フィエスタするらしいから一緒に行かない?」のような状況で ¿Te apuntas? と誘われたことあるんじゃないでしょうか?そんなときは迷わず ¡Me apunto!その話乗った!」ですね。


¡jate! (el 31 de diciembre)

mojar は他動詞なら「濡らす、浸す」で、再帰動詞では「濡れる」ですね。ただ、辞書によると再帰の場合は「おねしょをする」という意味もあるようなので jate は「寝小便しろ!」ってこと。。。?

もちろん、そんなわけはなく。"オレの"落ち穂ひろいノートには

Venga, ¡mójate! ¿Qué piensas tú sobre esto?

と書かれています。何かについて友だちと話しているときに、内容がセンシティヴだったため言葉を選んでから話そうとしたら言われた、という文脈です。
意味は「(ためらわずに)君の意見を言って!」だそうで、基本的には命令形で使われるとそのスペイン人の友だちに教えてもらいました。

ちなみに、西日辞典にはこの意味は記載されていないのですが、もちのろん、Diccionario de la lengua española には載ってますのでご安心を!

8. prnl. coloq. Comprometerse con una opción clara en un asunto conflictivo.(mojar)



¡No te cortes! (el 17 de enero)

cortar の意味の説明はもはや不要ですよね。ただ、再帰の場合は「(髪や爪を)切る」の他にも重要な意味があります。
この表現は、休暇中に友だちの実家にお邪魔した際、ご飯を作ってくれた友だちのママに言われました。この状況での意味は「遠慮しないで(どんどん食べて)」です。英語で言うと Don't be shy. に相当するらしいです。

この表現を通して、corte に「恥ずかしさ・気後れ」という意味があると学びましたが、どこで知ったか覚えてませんが5月13日のページに

¡Qué corte!(こいつは参った)

という記述がありました。
痛いところを突かれてバツが悪くなったり、何かをしでかして体裁が悪くなったりした状況で「穴があったら入りたい」と思うような恥ずかしい思いをしたときに使うといつか誰か(スペイン人)に教えてもらったことは確かです。


¡Así se habla! (el 18 de enero)

いつか、大学の授業で先生が "Eso no se dice." を「それは言わない約束でしょ」と訳されていました。なるほど、『se不定人称文』をおもしろい訳をされるなと感嘆したものですが、再帰動詞 hablarse は複数の人が「話し合う」という意味なはずなので、この表現は「そう話し合う約束でしょ」とか?いや、絶対違う!(笑)

少し離れたバスターミナルまで付いてきてと言われたので Mmm... Bueno, te acompaño. と、しぶしぶOKしたら ¡Así se habla! ¡Este es mi Keisuke! jeje とニヤニヤしながら言われました。
この表現は西日辞典にも DRAE にも載ってないのですが、日本語にするなら「そう来なくっちゃ!」といったところでしょうか。
結局、ひとつ新しい表現を知れたから、まあいいかと思いながら付いていきましたが。
¡Este es mi (誰々)! まで言い出したら完全に調子に乗ってるので注意です(笑)


⑦ ¿Qué te cuentas? (el 13 de marzo)

contar再帰用法は「自分をカウントする」から「自分を〇〇に含める、見なす」という意味になりますが、この表現は訳してみてもナゾが深まるばかり。。。
よくスペイン語ネイティヴは週末などの会わない期間が少し開いた後の挨拶として Cuéntame algo. と言うので、それに近い何かかなとは想像できますが。。。

この表現は ¿Qué tal?¿Cómo estás? と同じで「調子どう?」意味だそうです。
西日辞典や DRAE には ¿Qué cuentas?, ¿Qué cuenta usted? としかなく、再帰形では載っていないのですが、少なくともスペインでは ¿Qué te cuentas? とも言うそうです。確認したのでご安心を。

実は、この時表現を初めて耳にしたとき ¿Qué te cuentas, tronco? と言われたのですが、最初の Qué しか分からず、開いた口が塞がらず。狼狽してると、その友だちが ¿Qué tal, tío? みたいな感じだよと教えてくれました。最初からそう言え!と思いながらも、ひとつ新しい表現を知れたから、まあいいかと(笑)

ただ、すごく coloquialinformal らしいです。英語でいうと Wassup, dude? 的なものだと思います。


⑧ ¿A dónde tiras? (el 28 de abril)

動詞 tirar でまず思い浮かぶ意味は「投げる、捨てる、倒す」とかですかね。ただ、自動詞になるとまた別の意味を表します。

友だちとカフェテリアに行った帰り、分かれ道で彼が指を指しながら言いました。ここでの意味は「どの方向に行くの?」です。
個人的な感覚としては ¿A dónde te tiras? のように再帰としてしまいそうですが、ここでは自動詞ですのでお気を付けください。
シンプルですし、想像しやすい意味ですが、知らないと使えないですよね。


¡Has picado! (el 13 de mayo)

「つつく、つまむ、虫が刺す、辛い」など日常的な意味だけでもたくさんあるので、この動詞もだいぶ厄介ですね。
残念ながら、この表現を初めて聞いた状況は覚えていないのですが、意味は「(罠やいたずらに)ひっかかったね!」です。
おそらく、「(魚が餌を)つつく」という意味から派生したんだと思うのですが、おもしろいことに日本語でも「偽の情報に踊らされる」ことを「釣られる」と言いますよね?
言語は違えど、考え方が同じというのは興味深いですね。


⑩ me toca esperar (el 31 de mayo)

まずはこれを言われたときの状況説明から。
帰国の日にちが迫っていたので、大学の期末テストのいくつかを特別に一週間早めてもらいました。それを同じ授業を受けていたスペイン人の友だちに言うと、

Jo, qué suerte, a mí me toca esperar

「えー!早めてもらっていいなぁ!私はまだ(試験日まで)待たないといけないのに!」といった訳になるんですが、ここでの動詞 tocar の驚きの用法は「〜しないといけない」です。
西日辞典には記載なし。DRAE には一応載ってますが、、、

21. intr. Ser de la obligación o cargo de alguien.(tocar)

21番目の用法!!
ちなみに、tocar は28個もの意味を持っていますが、ある程度耳にするこの用法がだいぶ軽視されてますよね?
西日辞典に載ってないのは問題かと。。。提言します。。。

 

【まとめ】

      落ち穂表現      日本語
 Quédatelo.   それあげるよ。
 ¡Ahora caigo!   今分かった!
 ¡Me apunto!   その話乗った!
 ¡Mójate!   君の意見を言って!
 ¡No te cortes!   遠慮しないで!
 ¡Así se habla!   そう来なくっちゃ!
 ¿Qué te cuentas?    調子どう? 
 ¿A dónde tiras?   どの方向に行くの?
 ¡Has picado!   ひっかかったね!
 me toca esperar.   待たないといけない。 


いかがでしたか?
今回初めて知った用法が一つでもあって、役に立てていれば幸いです。

今回のタイトルは「"オレの"落ち穂ひろい ①」。
①ということは②、③、、、と続いていくということですね。
次の「"オレの"落ち穂ひろい」まで ¡¡Os toca esperar!! ;)