イスパニア語ブログ

FILOLOGÍA ESPAÑOLA

Palabra del año 2020

いつか、スペイン語remontada という単語がフランス語の辞書に記載されるという日本のニュースを読みました。
果たしてこんなニュースに食いついた人間は日本に何人いるのでしょうか?そもそもどこに需要があると思って日本語にされたのか?まあ、いずれにしろ、ぼくにとっては非常に興味深いニュースとして心に残っているので、この記事を日本語にした人も喜んでるでしょう ;)

2017年3月8日のチャンピオンズリーグバルセロナパリサンジェルマンの一戦。バルサが起こした「カンプ・ノウの奇跡」と呼ばれる"歴史的大逆転劇"は "remontada histórica" としてスペインだけでなく、世界中で話題になりました。
あまりサッカーに興味がないぼくも、当時スペインにいたので、バルのテレビでこの試合をリアルタイムで観ました。後半ロスタイムにバルサが2点を追加して大逆転を起こすことなどまだ知らない周りのスペイン人たちが後半30分くらいからバルセロナのベスト8進出はムリだと叫びながら、頭を抱えながら、泣きながら帰って行ってました。おそらく後にリアルタイムでの大逆転劇を見逃したことを知り、再び頭を抱えたんじゃないでしょうか?「あきらめたらそこで。。。」彼らはまだこの名言を知らなかったようです :)

サッカー史に残るこの大逆転はあまりに衝撃的すぎて、「大逆転」を意味するスペイン語 remontada がフランスのメディアや日常会話で頻繁に使用されるようになった結果、フランス語辞書 Larousse の最新版に記載されることになったそうです。
新たに登録される単語の中にはフランス語化された外国語などもある中で、この remontadaスペイン語での表記と発音のままでフランス語に取り入れられるとのこと。それだけフランスにとってこの大逆転負けが衝撃的だったということでしょうか。もしくはこの屈辱を忘れないためにとか?

 

続きを読む

ñ の言語

アラビア語に対してどんなイメージを持ってますか?右から左に文字を書いていくということはなんとなく知っている人も多いと思いますが、よく聞くのは「ミミズが這ったような文字」というもの。ぼくからしたらラテン文字筆記体の方がミミズっぽく思えるんですが。

つい最近、漢検の勉強をしてて知った言葉が「蟹行文字(かいこうもんじ)」。カニが横歩きするように、横書きする欧米の文字のことを言うそうで、今後は「アラビア語はミミズみたい」って言われたら「ラテン文字カニやで」って言ってやろうと思います(笑)
ただ、アラビア語も結局はラテン文字言語と同じ横書きなのでアラビア語は「ミミズであり、カニでもある」のかもしれませんね ;)

 

続きを読む

"PERjuicio" vs "PREjuicio"

言語というものは人間に与えられた特殊能力だと思っていましたが、人間が言語を認識する能力は案外適当のようです。次のスペイン語の文を読んでみてください ↓

Sgúen etsduios raleziaods por la Uivenrsdiad ignlsea de Cmdibrage, no ipmotra el odren en el que las ltears etsén ersciats, la úicna csoa ipormtnate es que la pmrirea y la útlima ltera esétn ecsritas en la psiócion cocrreta. El retso peuden etsar ttaolmntee doaerdsendo y aún pordás lerelo sin pobrleams, pquore no lemeos cada ltera en sí msima snio cdaa paalbra etenra.
引用元 : "La rzaón por la que tu cberreo pdeue leer etse txeto no es la que el célebre viral te ha hecho creer (2018/02/04付)"

いきなりのナゾの "Sgúen" という単語に戸惑ったかもしれませんが、最後まで特に問題なく読めて理解できたはず。でも、改めて文章の各単語を眺めてみると単語を構成する文字が適当に並べられているだけ!なのに、なぜか読めてしまうという不思議。
比較的長い "doaerdsendo" に少し立ち止まるかもしれませんが、これも文脈から容易に desordenado であると分かりますよね。

試しに上の文を日本語に訳して同じようにめちゃくちゃにして作ってみたので日本語版も読んでみてください ↓

けりっぶんじ だがいく が おなっこた けゅきんう に よると
かれいてかる もじの じんばゅん は かけんい なく
ゆいいつ じよゅうう なのは さしいょ と さいご の もじ が
ほらんい の いち に おていれかる こと である。
そほのか が かぜんんに めくゃちちゃ で あてっも
もだいん なく よはるめず である。
ななぜら わしたたち は ひじずともつ でなはく
ひずんごたとつ よでいんる かであらる。

めちゃくちゃなはずなのになぜか読めちゃいませんか?これが我々人間に与えられた言語を認識する能力なのです!人間の脳ってすごいですよね。でも裏を返せば、こんな適当な文でも伝わるほどに人間の言語認識力は適当とも言えますが。。。

上のめちゃくちゃな文に書いてある通り、ケンブリッジ大学の研究によると単語の最初と最後の文字さえ正しい位置に書かれていたら、間の文字がめちゃくちゃな順番であっても脳は本来の単語を認識することが可能で、この現象を「タイポグリセミア」というそうです。
単語を知ってさえいればめちゃくちゃな順番の文字の羅列を頭が勝手に並べ替えて理解してくれるということですが、なんでそんなことが可能なのかはまだ解明されていないようです。ただ、言語が違っても同じ現象が起きるという点に人間の認知能力の神秘を感じます。

しかし、それはあくまで元の単語を知っているという前提条件の下での話。先日、会社で次のようなメールが回ってきました ↓

Le solicité haga el requerimiento directo a Control de Producción. Nosotros con todo gusto iniciamos la actividad, pero debemos de ser detonados a través del almacén.
(訳 : 生産管理部の方に直接依頼を出してもらうように彼に頼みました。依頼された活動は実施しますが、本来は倉庫管理部から我々の方に指示を出してもらうことになっています。)

要は、他部署から何かしらの要望があれば快く引き受けるけど関係部門との兼ね合いもあるので、社内の指示系統の順番に従ってくださいという内容。ここで注目すべきは "debemos de ser detonados" の部分。detonar って何や?と思って辞書で調べてみるとその意味は「爆発する」。。。

「我々は倉庫管理部を通して爆発されないといけない」!?

ドユコト!?と思って隣の席の同僚に尋ねると、笑いながら正しくは denotados だと教えてもらいました。ただ、ぼくは detonardenotar も自分の語彙になかったのでタイプミスということにも気付けないという悲しさ。ちなみに、このように一つの単語の中で音の前後が入れ替わる現象を (metátesis) と言います。

上のはちゃめちゃな文は読めても、たった二文字しか入れ替わってない一単語が分からないなんて。。。この悔しさをバネに今回の記事を書きます :)

 

続きを読む

スペイン語における"バグ"

「3月1日は日曜日で祝日、晴れの日でした」

日本語とスペイン語の通訳をしているメキシコ人の友人にこの文を見せられ、「ほら、日本語って難しいでしょ」と言われました。彼曰く、この一文に日本語の難しさが凝縮されているとのことですが、何が難しいのかさっぱりだったのでどういうことかを聞くと、この一文に出てくる5つの「日」の漢字がすべて読み方が違い、日本語の漢字の煩雑さを表しているらしいです。。。

タシカニ
ネイティヴからしたら大変ですよね。実際、日本語の通訳をしている人や勉強している非ネイティヴに日本語で何が一番難しいと思うか質問すると、大抵「漢字」という答えが返ってきます。ネイティヴ並みに日本語を話せるレベルの人でも読み書きは得意じゃないという人は結構周りにいます。
ぼくは言語が好きで複数の外国語を本気またはかじる程度に勉強してきましたが、常々「外国語として日本語を勉強する気にはなれない」と思います。もし自分が例えばスペイン語ネイティヴで、今くらい外国語に興味を持ってても日本語は選ばないかなと(笑)
母国語である以上、日本語を完全に客観的に見ることはできないですが、それを考慮しても abc といったアルファベットを使うスペイン語などを母国語に持つ人にとっての日本語の難しさ、というよりは「習得する大変さ」は計り知れないかなと。だからこそ、ぼくは日本語を操る非ネイティヴの方々には本当に尊敬の念を抱きます。

上の文を教えてくれた友人は日本語でこう嘆いていました。「日本語はバグってるよ。。。」
彼は「バグる」という口語(?)を使いこなすくらいに日本語が上手なのですが、そんな彼でも難しいようです。それにしても「バグってる」って(笑)

 

続きを読む

verbo defectivo とは?

6年使ってきた電子辞書が今年の5月に壊レタ。。。

辞書がないとこのブログを書く時に必ずぶち当たるスペイン語の文法用語の日本語訳を手に入れられないという問題があります。ブログを書くにあたってその日本語訳は必須。ネットでスペイン語で調べたらその定義などは見つかりますが、日本語訳まで見つかることは多くはないのです。一般言語学的な内容ならネットでも対応する日本語訳が見つかりますが、スペイン語学特有の文法用語だとネットでも日本語訳には辿り着かないので西和辞書がなければ何もできないのです。。。

メキシコで途方に暮れていると、日本にいる友人がなんと小学館の西和中辞典の紙辞書をメキシコまで送ってくれるという神対応!ほんとに感謝感激雨あられです :)

 

続きを読む