armas antiZOMBIEs
「狂鹿病」
この言葉を耳にしたことはありますか?
前回の記事で「狂犬病」というワードが出てきましたが、その鹿バージョンが存在しているというニュース知ってますか?
今、アメリカやカナダでこの「狂鹿病」というものが蔓延し始めていると今年の頭くらいにニュースで見ました。なんでも、その症状が「鹿がゾンビのようになる」という衝撃的なもので、今後人間も感染する可能性も0ではない、ということで非常に恐ろしくもありますが。。。
スペイン語でこのニュースを見ていると、venado という単語をよく目にしました。
調べてみると、生物学的な厳密さは分かりませんが「シカ (ciervo)」と同義だそうで。
ただ、形容詞としても用いられるそうで、その意味は「狂った (loco)」。
"un venado venado (=un ciervo loco)" でまさに「狂鹿(病)」ですね。
信じるか信じないかはあなた次だぃ。。。
【きっかけ】
2年くらい前、「ぼくのぼったくりBAR」というトンデモナイアプリゲームにも飽きた頃、Into the Dead というゾンビゲームを見つけました。
武器を拾いつつ、ゾンビを殺しながら生き延びるというよくあるゲームですが、そのシンプルさと難しさが絶妙な割合であったので引き込まれました。
そのアプリゲームですが、ぼくのスマホ本体の設定がスペイン語であったためゲーム内の言語もスペイン語となり、図らずとも「対ゾンビ用武器」をスペイン語で学ぶことができました。
なので、今回は日常生活ではなかなか知ることはないであろう言葉を知ったので、今回はそれらを紹介しながら新たに学んでいこうと思います。
【armas antiZOMBIEs】
語源に関しての引用元はいつも通り De Chile.net の DEEL からです。
① pistola[拳銃(自動拳銃)]
pistola という単語の起源にはいくつかの説があるようで、、、
- 小型(で片手で射撃できる)銃が初めて生産されたイタリアの町 Pistoia から
- pistola という名のポケットナイフが製造されていたトルコのある町の名前 Pistola から。片手で握ることができ、簡単に相手から隠すこともできるという似たコンセプトの武器ということで火器の方も pistola の名がついた
- 15世紀の「細くて小さいパイプやフルート」を意味したチェコ語 píst'ala から
(PISTOLA)
いきなり語源が散らばってますね。
二つ目のトルコの町はネットで調べてみましたが出てきませんでした。とても小さい村とかなのか、それとも歴史の闇に飲み込まれて消滅してしまったのか。残念ながら真相も闇の中です。。。
一方、一つ目の説のイタリアの町 Pistoia は現存する町なので、それだけでもこの説の信憑性が上がりますね。
② revólver[リボルバー(回転式拳銃)]
revólver はその音感から何となく予想はしてましたが、、、
英語の動詞 revolve + 接尾辞 -er から(REVÓLVER)
やっぱり英語ですよね。
リボルバーの歴史を少し紐解いてみると、その生みの親はアメリカ人の Samual Colt という人物。
厳密にはそれ以前にもリボルバーと同じ原理のものは存在していましたが、彼が「撃鉄を親指でカチッ」からの「チャンバー(弾の入った輪胴)が回転」という機構を発明して1836年に特許を取得し、そこから普及していきました。
「コルト・パイソン」という銃を聞いたことありますが、そのコルトとはこの Samual Colt のことでした!ただ、彼自身は "revolving gun" と呼んでいたそうですが。。。
③ fusil[小銃]
fusil de asalto[アサルトライフル(自動小銃)]
ラッパーのEminemの曲の中に何度か出てきて名前だけ覚えた "AK-47" という銃。どんな見た目でどういった機能があるのかは全く知りませんでしたが、このカラシニコフ銃は fusil de asalto に分類されるそうです。
そして、その fusil という単語の語源は、
同じ形で綴られるフランス語からカスティーリャ語に取り入れられた
12世紀頃、おそらく俗ラテン語の focilis petra の短縮形である focilis に由来し、当時は「火打石」を意味していた foisil もしくは fuisil という単語から来ている(FUSIL)
フランス語経由でスペイン語に入ってきたんですね。
ちなみに、個人的に気になったので調べたんですが、、、
最初 fusil の写真を見たときに「ライフル」のことかなと思いました。で、実際に fusil de asalto は「アサルトライフル」と呼ばれていますしね。
簡単に言うと、rifle > fusil
つまり、「ライフル」という分類の中に「小銃」が含まれているそうです。
これ以上踏み込んでも、実際に使い分けるわけでもないので調べるのはやめます。
(あと、こういった火器の分類には諸説あるようで、厳密に分けていくのは難しいようです。)
そして、その rifle という単語については、
英語から来ており、古くは rifle-gun と呼ばれた
元々、rifle とは「溝」を意味し、銃砲身の内部に施された溝のことを示す
英語の rifle は「溝を掘る」という意味のフランス語の rifler に由来する(RIFLE)
この溝があることによって弾丸が回転をしながら発射され、無回転の場合と比べてよりまっすぐに進み、的へ当てることがより簡単となるんでそうです。
ライフルといえば、思い浮かぶのがもう一つ。スナイパーライフル、すなわち「狙撃銃」 です。
狙撃手はスペイン語では francotirador ですので、fusil de francotirador と呼ぶそうです。
この francotirador についても語源を調べてみました ↓
フランス語の franc-tireur に由来
古フランス語で libre を意味する形容詞 franc (franco)と、「発砲する人」を意味する名詞 tireur が組み合わさった単語である(FRANCOTIRADOR)
フランス語の動詞 tirer はスペイン語の disparar に相当するそうです。ということは、francotirador は直訳すると「自由に狙撃する人」なんですね。
映画「アメリカン・スナイパー」の予告で、無線で狙撃の指示を仰ぐものの「お前の判断で撃て」と言われるシーンがありますが、このようにスナイパーは場合によっては上からの命令ではなく、自身で決断を下して狙撃する、という意味で「自由に狙撃する人」なのでしょうか。
④ escopeta[ショットガン(散弾銃)]
個人的には、この「散弾銃」こそゾンビ映画に出てくるような気がします。
連射でゾンビを倒す爽快さより、散弾銃で一発ずつ殺していく緊張感の方が映画向きなのかなと。
たしか、ゾンビ映画「アイアムアヒーロー」の主人公(大泉洋)が持っていたのもこの散弾銃じゃないですか?
そして、その語源は、
狩猟のために用いられるこの火器は、イタリア語の schipetto から来ており、火器を意味する schippo に縮小辞が付いた形である
このイタリア語の単語自体は、膨れた頬を引っ叩く際に生じる音のラテン語でのオノマトペ stloppus を起源に持つ(ESCOPETA)
次はイタリア語起源でした!
それにしても、ほっぺを叩いた音って「ストゥロップス」だったんですか?(笑)
英語の「クックドゥードゥルドゥー」「オインクオインク」以来の衝撃です。
引用内にもあるように、散弾銃は狩猟の際に使用される銃らしいですね。
また、調べてみるとクレー射撃の銃もこの種類とのこと。たしかに、一回一回「ガシャンッ」ってしてるイメージあります。
なるほど、狩猟やクレー射撃で使われるということで、一般人が所持していてもそこまでの違和感が生まれないからゾンビ作品でよく見られるんですかね??
⑤ metralleta[サブマシンガン(短機関銃)]
このゾンビゲームを通して初めて聞いた単語。まあ、逆に知ってたら怖いですよね。
この単語の語源は、
フランス語で mitraille + -ette(縮小辞)の組み合わせで1935年頃に生まれた単語 mitraillette に由来し、スペイン語での pistola ametralledora にあたる
フランス語の mitraille はスペイン語の metralla(散弾)を意味し、16世紀以降は価値の低い硬貨 (caderilla) を示し、広義でくず鉄一般を意味するようになった
さらには、砲身に弾を装填するために用いられたくず鉄という意味も持つようになった(METRALLETA)
語末の -eta は縮小辞なんですね!
それが英語での submachine gun の語頭の sub- に対応しているんだと思います。
そして、サブマシンガンのグレードアップが ↓
⑥ ametralladora[マシンガン(機関銃)]
サブマシンガンとは異なり、そのサイズは小さくはないため、縮小辞の -eta はついていませんね。
また、語源ではないですが一応引用します ↓
フランス語の mitraillette (=arma de fuego automático) に対して、接頭辞 a- (hacia) + 接尾辞 -dora (agente, la que hace la acción) がついた形となっている(AMETRALLADORA)
(接頭辞) (散弾) (接尾辞)
a- + metralla + -dora
「方向を定めて、散弾を放つ、機関」まさに「機関銃」ですね。
そういえば、あの紳士も機関銃の一種である「ガトリング砲」をぶっ放してましたね。
⑦ granada[手榴弾]
残念ながら「手榴弾」という意味についての語源は記載なしでした。。。
この granada という単語については、ぼく個人的にはまず「ザクロ」という意味で知った後に「手榴弾」という意味も持つと知りました。
なので、どうしてこの二つが同じ単語になったのかが気になってました。
ネットで調べてみると、ザクロの特徴的なあの粒々が、火薬の詰まった手榴弾の内部に似ているから同じ単語で表されるようになったとか。
上の写真では火薬は入ってませんが、すでにめっちゃ似てます。大納得です。
また、手榴弾を手ではなく、機械で遠くに飛ばすのが「グレネードランチャー」。
「手榴弾 (granadas) を投げ飛ばす (lanzar)」で lanzagranadas。そのままですね。
他にも、
lanzallamas ... 火炎放射器
lanzacohetes ... ロケットランチャー
などの武器も同じ語形を持ってます。
⑧ ballesta[クロスボウ]
これも初めて聞きました。
和訳では弩(おおゆみ)というそうで、なんとなく耳にしたことある「クロスボウ (crossbow)」と呼ばれています。
ラテン語の ballista から来ており、縄をぴんと張りバネとして用いて発射物を放つ武器を表していた
bala(弾丸)、balística(弾道の)、parábola(放物線)といったスペイン語の単語の起源となったギリシャ語の βαλλιστής (ballistás) や βάλλειν (ballein=lanzar, disparar) からのラテン語への借用語である(BALLESTA)
元を辿るとギリシャ語ですか!?
ちなみに、「クロスボウ」よりも聞き馴染みのある「ボウガン」は日本の株式会社ボウガンの商標名らしいです!
「ボウガン」って日本の名前だったんですね。驚きです。
⑨ motosierra[チェーンソー]
sierra が「のこぎり」なので、
「電動のこぎり」ということで motosierra ですね。
英語の「チェーンソー」のように sierra de cadena とも言います。
sierra という単語に関してずっと疑問に思っていることがあります。
どうして「のこぎり」を意味する単語が「山脈」も意味するのか?全く関連性が見えないので、語源が気になりますが、、、
ラテン語の serra から来ており、元々山頂が三角形の山の連なりを意味していたが、後にその類似した形からのこぎりを意味するようになった(SIERRA)
形からでしたか!?
「山の連なり」から「のこぎりの刃」の形を連想?昔の人々のイマジネーションってすごいですね。
ただ、上の説とは真逆のものもあるようで、
ラテン語の動詞 serrare (serrar : 挽く, 切断する) から生まれた単語 serra は元々切断する道具、すなわちのこぎりを意味していたが、その後比喩的に山や山脈を表すようになった
カスティーリャ語の歴史ではまず「山脈」という意味で文献に登場し、その後「のこぎり」という意味として登場する(SIERRA)
どっちが先なんでしょうか?
まさしく ¿Qué fue primero: el huevo o la gallina? ですね。
【まとめ】
スペイン語 | 日本語 |
---|---|
pistola | 拳銃(自動拳銃) |
revólver | リボルバー(回転式拳銃) |
fusil | 小銃 |
fusil de asalto | アサルトライフル(自動小銃) |
rifle | ライフル |
fusil de francotirador | 狙撃銃 |
escopeta | ショットガン(散弾銃) |
metralleta | サブマシンガ(短機関銃) |
ametralladora | マシンガン(機関銃) |
granada | 手榴弾 |
lanzagranadas | グレネードランチャー |
lanzallamas | 火炎放射器 |
lanzacohetes | ロケットランチャー |
ballesta | クロスボウ |
motosierra | チェーンソー |
今回はゲームに出てきた「対ゾンビ用の武器」を取り上げましたが、それらに関する語源を調べていくと、(イタリア語)・(トルコ語)・チェコ語・英語・フランス語・ラテン語・ギリシャ語と様々な言語に由来していることが分かり、予期せずインターナショナルなテーマとなりました。
まあ、今回出てきた単語を日常生活で使うことはないと思いますが、戦争映画やゾンビ映画を観るときに役に立つかもしれませんね ;)